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0001 ガブリエル・バティストゥータ(ARG) 【イタリアクラブレジェンド】 0002 アリエル・オルテガ(ARG) 0003 フリオ・リカルド・クルス(ARG) 0004 セバスティアン・バタグリア(ARG) 0005 アンドレス・ダレッサンドロ(ARG) 0006 ロベルト・アボンダンシェリ(ARG) 0007 ルシアーノ・ガジェッティ(ARG) 0008 マキシ・ロドリゲス(ARG) 0009 ハビエル・マスチェラーノ(ARG) 0010 ティム・ケイヒル(AUS) 0011 ハサン・サリハミジッチ(BIH) 0012 ルシオ(BRA) 【マスターリーグ隠し5】 0013 ファビオ・ロッケンバック(BRA) 0014 シウビーニョ(BRA) 0015 カカ(BRA) 0016 チアゴ・モッタ(BRA) 0017 ジュリオ・セーザル(BRA) 0018 エラーノ(BRA) 0019 クリス(BRA) 0020 フレッヂ(BRA) 0021 マルキーニョス(BRA) 鹿島 0022 ダニーロ(BRA) 鹿島 0023 ワシントン(BRA) 【マスターリーグ隠し3】 0024 フランサ(BRA) 柏 0025 マギヌン(BRA) 名古屋 0026 マルシオ・リシャルデス(BRA) 新潟 0027 0028 ジウシーニョ(BRA) 磐田 0029 ジェルマーノ(BRA) C大阪 0030 カレカ(BRA) C大阪 0031 フェルナンジーニョ(BRA) 清水 0032 エジミウソン(BRA) 大分 0033 0034 0035 シャビ・アロンソ(ESP) 0036 ホセ・アントニオ・レジェス(ESP) 0037 ファンフラン・ガルシア(ESP) 0038 ミゲル・アンヘル・アングロ(ESP) 0039 セスク・ファブレガス(ESP) 0040 ダビド・シルバ(ESP) 0041 ミカエル・シルヴェストル(FRA) 0042 マテュー・フラミニ(FRA) 0043 トライアノス・デラス(GRE) 0044 マルコ・バビッチ(CRO) 0045 アリ・カリミ(IRN) 【マスターリーグ隠し4】 0046 ロベルト・バッジョ(ITA) 【イタリアクラブレジェンド】 0047 マルコ・ディ・ヴァイオ(ITA) 0048 マウロ・カモラネージ(ITA) 0049 マルコ・ボリエッロ(ITA) 0050 ベルナルド・コラーディ(ITA) 0051 エミリアーノ・モレッティ(ITA) 0052 楢崎 正剛 0053 松田 直樹 0054 中田 浩二 0055 宮本 恒靖 0056 稲本 潤一 【マスターリーグ隠し1】 0057 中田 英寿 【マスターリーグ隠し1】 0058 小野 伸二 【マスターリーグ隠し1】 0059 明神 智和 0060 戸田 和幸 0061 西澤 明訓 0062 川口 能活 0063 曽ヶ端 準 0064 秋田 豊 【マスターリーグ隠し2】 0065 森岡 隆三 0066 服部 年宏 0067 森島 寛晃 0068 福西 崇史 0069 小笠原 満男 0070 市川 大祐 0071 中山 雅史 0072 鈴木 隆行 【マスターリーグ隠し1】 0073 柳沢 敦 0074 波戸 康広 0075 中澤 佑二 0076 大岩 剛 0077 鈴木 秀人 0078 田中 誠 0079 中村 俊輔 0080 奥 大介 【マスターリーグ隠し2】 0081 久保 竜彦 0082 高原 直泰 0083 山下 芳輝 0084 名良橋 晃 【マスターリーグ隠し2】 0085 下田 崇 0086 山田 暢久 0087 小村 徳男 【マスターリーグ隠し2】 0088 坪井 慶介 0089 遠藤 保仁 0090 名波 浩 0091 黒部 光昭 0092 永井 雄一郎 0093 松井 大輔 0094 石川 直宏 0095 大久保 嘉人 0096 土肥 洋一 0097 三浦 淳宏 0098 加地 亮 0099 茂庭 照幸 0100 永田 充 0101 藤田 俊哉 0102 山田 卓也 0103 廣山 望 0104 手島 和希 0105 本山 雅志 0106 都築 龍太 0107 玉田 圭司 0108 林 卓人 0109 那須 大亮 0110 徳永 悠平 0111 阿部 勇樹 0112 森崎 浩司 0113 鈴木 啓太 0114 今野 泰幸 0115 田中 達也 0116 平山 相太 0117 黒河 貴矢 0118 田中 マルクス闘莉王 0119 近藤 直也 0120 菊池 直哉 【マスターリーグ隠し1】 0121 青木 剛 0122 前田 遼一 0123 山瀬 功治 0124 根本 裕一 0125 高松 大樹 0126 坂田 大輔 0127 茶野 隆行 0128 西 紀寛 0129 大黒 将志 0130 駒野 友一 0131 巻 誠一郎 0132 箕輪 義信 0133 村井 慎二 0134 佐藤 寿人 0135 長谷部 誠 0136 青山 直晃 0137 我那覇 和樹 0138 羽生 直剛 0139 小林 大悟 0140 栗原 勇蔵 0141 中村 直志 0142 佐藤 勇人 0143 田中 隼磨 0144 山岸 範宏 0145 播戸 竜二 0146 藤本 淳吾 0147 二川 孝広 0148 橋本 英郎 0149 本田 圭佑 0150 家長 昭博 0151 川島 永嗣 0152 松橋 章太 0153 水本 裕貴 0154 水野 晃樹 0155 中村 憲剛 0156 西川 周作 0157 山岸 智 0158 矢野 貴章 0970 三浦 知良 0971 北沢 豪 【マスターリーグ隠し2】 0972 ホン・ミョンボ(KOR) 【マスターリーグ隠し】 0973 パク・チソン(KOR) 0974 イ・チョンス(KOR) 0975 アン・ジョンファン(KOR) 【マスターリーグ隠し4】 0976 イ・ヨンピョ(KOR) 0977 チェ・ヨンス(KOR) 【マスターリーグ隠し3】 0978 キム・ナミル(KOR) 0979 0980 イ・ドングク(KOR) 0981 0982 0983 ソル・ギヒョン(KOR) 0984 0985 0986 0987 0988 鄭 大世(PRK) 0991 キム・テヨン(KOR) 0992 キム・ヨンギ(KOR) 0993 キム・シンヨン(KOR) 0994 チェ・ソンヨン(KOR) 0995 キム・ドンソプ(KOR) 0996 ペ・スンジン(KOR) 0997 チョ・ヨンチョル(KOR) 0998 パク・チョンヘ(KOR) 0999 カン・ヒョイル(KOR) 1000 ラファエル・マルケス(MEX) 1001 ヴィルフレット・バウマ(NED) 1002 アントニウス・ルーリンク(NED) 1003 ハリド・ブーラルーズ(NED) 1004 1005 レオ・シン(NZL) 1006 クラウディオ・ピサロ(PER) 1007 李 漢宰(PRK) 1008 梁 勇基(PRK) 1009 李 成浩(PRK) 1010 クリスティアーノ・ロナウド(POR) 1011 デコ(POR) 1012 マニシェ(POR) 1013 パウロ・フェレイラ(POR) 1014 ヌーノ・バレンチ(POR) 1015 シモン・サブローサ(POR) 1016 キム(POR) 1017 リカルド(POR) 1018 マルコ・カネイラ(POR) 1019 ロケ・サンタクルス(PAR) 1020 ステファン・イシザキ(SWE) 【マスターリーグ隠し1】 1021 ハサン・シャシュ(TUR) 1022 イルディレイ・バストゥルク(TUR) 【マスターリーグ隠し4】 1023 イルハン・マンスズ(TUR) 【マスターリーグ隠し5】 1024 オカン・ブルク(TUR) 1025 リュシュトゥ・レチベル(TUR) 【ベシクタシュ】 1026 セルヴェト・チェティン(TUR) 1027 ギョクハン・ザン(TUR) 【ベシクタシュ】 1028 イブラヒム・トラマン(TUR) 【ベシクタシュ】 1029 ジャン・アラト(TUR) 1030 トゥンジャイ・シャンル(TUR) 1031 イブラヒム・ユズルメズ(TUR) 【ベシクタシュ】 1032 アルダ・トゥラン(TUR) 1033 エムレ・ベロゾール(TUR) 1034 ハカン・シュキュル(TUR) 1035 アルバロ・レコバ(URU)
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僕が歩んだ時間 刻んでいく時間 時計の針も戻ることなく廻っていく たった1秒の時間が進んだ でもその1秒はたった1秒だが その時間は積もっていく 1秒はとても長い時間になった 僕はこれまで何をしていたんだ?
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時間のループは終わった。 永森さんの言ったとおり俺はもうあの時の出来事をほとんど思い出すことが出来ない。 だけどたった一つだけ、思い出すことが出来ること、いや、絶対に忘れてはいけないことがある。 「ごめんごめん、お待たせ」 「大丈夫です。そんなに待ってないですよ。さあ、行きましょうか」 朝一緒に登校するのは今や日課になっている。 あの時間のループの中で俺達は互いに惹かれあっていた。 出会って2週間足らずで、なんて回りは言うがそんなことはない。 俺達はとても長い時間を一緒に過ごしてきたのだ。 まぁ、それに気づいているのはおそらく俺達だけなのだが… 「そういえば、みゆきさんは結局あの大学を受けるんだよね?」 12月になると3年の俺達の話題はやはり受験だ。 みゆきさんは東京の某大学の医学部志望だというのは知っているがついつい聞いてしまう。 「えぇ、たいへん厳しいとは思っています。ですが、やっぱり自分の想いに嘘はつけませんし、それに…」 「それに?」 「今なら頑張れる気がするんです!なんと言いましょうか、その…」 顔を真っ赤にして次の言葉を言えないみゆきさん。 やっぱりこの人はかわいいなぁ、なんて妄想中の俺はニヤニヤしまくりだ。 「大丈夫だよ、みゆきさんなら。うん、絶対に。俺が保証するよ! なんて頭の悪い俺に言われてもあんまり自信になんないか」 「い、いえ!ありがとうございます!とても嬉しいです。 やはり応援してくれる方が隣にいらっしゃるだけで…。 ほ、本当ですよ!だから…お互いに頑張りましょう!」 「うん。ありがとう、みゆきさん…」 互いに足を止め見つめ合う。まさか朝からこの雰囲気!ktkr! 「いやぁ、朝から見せ付けてくれるねぇ。お2人さん」 「まずはみゆきより自分の心配をしなさいよ。 あんたがみゆきと同じ大学なんてただでさえ無謀なんだから」 「こなちゃんもお姉ちゃんもだめだよぅ。2人がせっかくいい雰囲気だったのに」 ですよね…やっぱりこうなりますよね。はい、自重します。 「み、み、みなさん?!お、おひゃようございましゅ!」 みゆきさん、慌てすぎです。おひゃようございましゅって何ですか…。 「みんな、おはよう。そしてかがみさん、朝から痛いつっこみをありがとう…」 「けど驚きだよねぇ。まさか君がみゆきさんと同じ大学を受けるなんて。 いっつも授業中寝てるしさぁ、そんなに頭良かったっけ?」 「だよねぇ。私も聞いた時はびっくりしたもん。でもこの間の模試の結果私とそんなに変わらなかったような…」 …やめて、つかささん!それ以上言わないで。それにこの前ってあれは桜藤祭終わってからすぐにあったやつだし。 言い訳です、すみません。 言い忘れていたが俺はみゆきさんと同じ大学を受験するつもりだ。 もちろん学部は……文学部です。さすがに文系から医学部なんて離れ業は俺には無理だ。 いや、それ以前の問題か。とにかく俺も今はかつてないほど勉学に勤しんでいる。 「そんなことないですよ、つかささん。たいへん勉強がんばっているんですよ。 この前はたまたま調子が悪かっただけだと…。 最近は遅くまで学校に残って勉強されてるみたいですし、黒井先生も驚いていましたよ」 「みゆきは甘やかしすぎよ。もっとプレッシャーかけなくちゃ冗談抜きでやばいわよ」 「うーん。けど確かに最近はみゆきさん、私達と一緒に帰ってるし。 これはもしかしてちょっと期待できちゃう感じなのかも?」 「だったらいいなー。恋人同士で同じ大学行くなんてちょっとロマンチックだしねぇ、2人ともいいなぁ」 「まだ受かったわけじゃないんだし…ねぇ、みゆきさん」 「えぇ…まだまだ厳しい成績ですので…」 「…少しはフォローしてください…」 「え?!あっ!すみません!」 「相変わらずの2人だね」 こなたさんの一言でみんなが笑う。そういえば、大学に行くとこんな光景もなくなっちゃうんだよなぁ。 みんなで学校に行って、一緒に勉強して、そしてこうやって笑いあう。 そう考えると時間のループももしかしたらいいものかもしれない。今考えてみるとあの経験に少し名残惜しさを感じる。 けど、時間のループが終わったからこうやってみんなで先のことを話せるのか、ってあれ? 「みゆきさん、みんなは?」 「予鈴が鳴ってます!もう走っていきましたよ。私達も急ぎませんと」 みゆきさんが俺の手を引っ張り走り出す。やっぱりこっちの方がいい。 こうやってみゆきさんの暖かさを感じることができる。 「…みゆきさん?」 「は、はい、なんですか?」 走りながらこちらを振り向く。急いでる時に話しかけたからちょっと怒ってるのかな? 「これからは2人でたくさん思い出を作っていこうね」 「…どうしました?突然」 もう時間は繰り返さない。互いの思い出ももう消えることはないのだ。 なら…今、こうやって2人で走っているのも立派な思い出になるはずだ。 「え?い、いやまぁ、突然だけどさ…。俺達が…将来笑って話せる思い出を今からたくさん作ろう。 もう時間は繰り返さないんだから。 みんなで作った思い出だけじゃなくて、俺達2人だけの思い出を。これからもよろしくね」 「ふふ…。本当に突然ですね。けど、嬉しいです。その言葉が…。 ええ、たくさん作っていきましょうね。私達のこれからの時間は限られたものではないのですから…」 再び立ち止まって向き合う。俺はこの彼女の笑顔をこれからずっと見ていきたい。 限られた時間の中ではなく、ずっと。そう本当に永遠に、だ。 みゆきさんは眼を閉じている。それが何を望んでいるのか分からないほど俺も鈍感じゃない。 腰に手を回し抱き寄せようとする……ん?声が聞こえる。 「そこのバカップル!ほんとに遅刻するわよ!早くしなさーい!」 「「………」」 「…ぷっ、ははは…」 「ま、またですね」 2人で顔を真っ赤にして校門に走る。 あぁ、やっぱり時間を戻してください…。5分前でいいですので。 顔を真っ赤にしたみゆきさんが口を開く。 「…そ、その…たまには2人で帰りたいと思いまして。 大変な時期なのは分かっていますが……やはり寂しいです………。 今日の放課後…ご迷惑じゃないですか?」 迷惑なわけないです。前言撤回。やっぱりこのままでいいです。 後日談だが俺は今、みゆきさんと同じ大学に通っている。 ちなみに合格したときの俺の第一声は「待たせて…ごめん」だ。 結局、俺は一浪してしまった。 実は第二志望には受かっていたのだが、両親に無理を言い浪人という道を選んだ。 いつかみゆきさんの言った言葉、「自分の想いに嘘はつけない」今や俺の座右の銘だ。 みゆきさんは1年も俺を待っていてくれた。 これからは俺が恩返しをする番だ。流れる時間の中で…2人でたくさんの思い出を作っていこう… ~完~
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時間 匁 現地 投下時刻 解決時刻 所要時間 発見時刻 捜索時間 総探索時間 1 奥多摩 12 04 39 12 20 30 0 15 51 13 47 38 1 27 08 1 42 59 2 熊本 13 48 30 14 38 53 0 50 23 18 16 14 3 37 21 4 27 44 3 神戸 18 17 42 18 19 58 0 02 16 18 51 18 0 31 20 0 33 36 4 佐賀 18 52 59 20 22 01 1 29 02 21 38 18 1 16 17 2 45 19 5 山口 21 39 49 22 02 28 0 22 39 0 16 41 2 14 13 2 36 52 6 北海道 0 18 42 0 25 39 0 06 57 1 42 35 1 16 56 1 23 53 7 福岡 1 53 36 2 01 56 0 08 20 2 28 35 0 26 39 0 34 59 8 鹿児島 2 31 32 4 14 31 1 42 59 10 05 59 5 51 28 7 34 27 9 岡山 10 10 57 10 14 36 0 03 39 11 33 38 1 19 02 1 22 41 10 福井 11 34 48 12 01 59 0 27 11 13 43 25 1 41 26 2 08 37 11 浜松 13 45 23 13 52 52 0 07 29 14 17 44 0 24 52 0 32 21 12 ガムテロ 14 19 08 14 27 03 0 07 55 新宿 14 42 19 0 15 16 0 23 11 仙台 15 25 35 0 58 32 1 06 27 郡山 16 34 18 2 07 15 2 15 10 梅田 14 55 22 0 28 19 0 36 14 三宮 15 45 09 1 18 06 1 26 01 広島 16 08 52 1 41 49 1 49 44 岡山 15 46 58 1 19 55 1 27 50 高知 15 59 52 1 32 49 1 40 44 高松 18 37 06 4 10 03 4 17 58 福山 16 38 18 2 11 15 2 19 10 札幌 14 53 00 0 25 57 0 33 52 川崎 15 00 50 0 33 47 0 41 42 静岡 15 42 22 1 15 19 1 23 14 福井 15 56 33 1 29 30 1 37 25 博多 15 38 25 1 11 22 1 19 17 - 国分寺 18 37 06 0 49 32 6 12 26 1 45 48 0 56 16 7 08 42
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二月中旬はまだ寒さが厳しい時期。 今朝も霜が降りてたくらい冷え込んだけど、私達学生は学校へ行かなくてはならないのだ。 なるべく厚着をしているものの、寒いからやや猫背気味になってしまう。 ただでさえ猫っぽいと言われているのに…これじゃホントに猫だよ… そんな寒さに耐えながら学校への道を一人歩いていくと、突然後ろから衝撃を受けた。 唯「あ~ずにゃんっ!!」 梓「うわあっ! って! えっ? ゆ、唯先輩?」 そこに居たのは唯先輩だった。 もっともこんな風に抱きついてくるのは唯先輩くらいしか私は知らないんだけど。 それにしても珍しい。 基本的に私と唯先輩は登校時間が違うから、朝はほとんど会う事はないのだ。 でも朝から唯先輩に会えるなんて、今日はついてるかも。 唯「おっはよ~あずにゃん!今日も寒いねぇ~」 梓「おはようございます 唯先輩! 今日は早いですね、日直か何かですか?」 唯「あ~…うん、そんなところかな?」 なんとなく唯先輩がおどおどしてるし、顔が赤い気がする。 唯「あ、あずにゃん、ほいっ!」 すると唯先輩は鞄の中から可愛らしくラッピングされた小箱を取り出し、 私の前に差し出してきた。 梓「え? なんですか?」 唯「ハッピーバレンタインだよ、あずにゃん!」 私の手にその可愛い小箱を乗せながら先輩は笑顔でそう言った。 梓「えっ! わ、私に…ですか?」 唯「うん!」 梓「あ、ありがとうございます! とっても嬉しいです!」 唯「よかった~♪」 梓「あ、でも私…準備してなくって…その…」 唯「あ、いいよいいよ、私が勝手にやったことだから気にしないで!」 梓「す、すいません…」 唯「あっ 私急ぐんだった! じゃあまた後でね~」 梓「あ…」 そういって唯先輩は小走りで駆けて行ってしまった。 一緒に登校出来ると思ったんだけど、急いでいるみたいだから仕方ないか… 手の上の先輩からのバレンタインチョコを見つめ、今日が2/14だと改めて知った。 そう今日は2/14 世間ではヴァレンタインデーだ。 でも私はバレンタインの準備を何もしていなかったりする。 一応、お世話になっている先輩方や親友に配るくらいは…と考えたんだけど、 渡す時の事を考えるとどうにも気恥かしくて、悩んでいるうちに当日を迎えてしまったのだ。 我ながら情けない… 私だってチョコを渡したい相手はいる。 その人とは多分私の友人関係の中で一番仲良くって、 一緒にいるととても温かくて心地よくて… いつも抱きしめられて、口では嫌がっているけど、本当は嬉しくって… 誰よりも優しく、誰よりも私を可愛がってくれる…そんな先輩… 唯先輩の事が、私は大好きだった。 ホントの事を言うと今日だってチョコを渡したい。 愛情をたくさん込めた手作りチョコを渡して、唯先輩との距離をもっともっと近づけたい。 でもなまじ仲がいい分、改まってチョコを渡すとなると照れくさいってもんじゃない。 それに私達はそんな事をしなくても、ずっと一緒に居られる… 漠然とだけどそんな気がしているのも、チョコを渡せない理由になっている。 だけど、ハッキリしない関係でいいのかな…と悩んでいるのも事実だ。 じゃあせめて先輩方全員にって事で”友チョコ”を渡すとか? ううん…それはそれで納得できない。 まったく…ほんとめんどくさい性格だよね、私って… でも、唯先輩は私にチョコを渡してくれた。 心が躍るくらいに嬉しいことには間違いない。だけど… 梓「…でもこれ… みんなに配る ”友チョコ” …なんだよね…」 分かってる。 これが私だけの特別なチョコじゃない事くらい。 唯先輩はみんなに分け隔てないから、これもいわば ”友チョコ” の類なんだろう。 …そう思うと少しだけ寂しく思ってしまう。 最低だな、私… 大好きな唯先輩から貰えたチョコにケチをつけるなんて… だいたい自分では、その ”友チョコ” すら準備していないというのに… 嬉しさと少しの寂しさを抱えながら学校に到着する。 さすがはバレンタインデー当日。女子高といえどもやっぱり女の子のお祭りだ。 チョコの甘い香りがあたりに立ちこめており、少々胸焼けしそう。 友達同士で交換するのはもちろん、憧れの先輩に渡したり、中には本気で本命チョコを渡す子だっている。 女の子同士…別に私はそんなこと気にはしない。 だって、私も同じなんだ……だけど、私とその子には決定的な違いがあった。 私には渡す…前に進もうとする”勇気”が足りなかったのだ… 教室では憂から手の込んだチョコを貰った。 純の場合、後輩が先輩方にチョコを配るのがジャズ研の恒例儀式となっているらしく、 大量にまとめ買いしたチョコの余りを私と憂にくれた。 さすがに私だけ何もないのは心苦しかったので 梓「こんどパフェでも奢るからね」 二人に約束をする事で今回は許してもらう事となった。 そんなこんなで、一日中、周りからはチョコの話しが尽きないまま放課後を迎えた。 純「じゃあ私、ジャズ研行くね~」 純はこれから先輩方へのチョコ祭りで大変そうだ。 憂「じゃあまた明日ね、純ちゃん、梓ちゃん」 憂は部活に入っていないのでそのまま帰路に就く。 私は部室への道を急いだ。 廊下を抜け階段をあがり、部室となっている音楽準備室にたどり着く。 深呼吸を一つしてから、いささか立てつけの悪くなった扉を押しあける。 梓「こんにちわ~」 唯「あ、あずにゃんだ~! まってたんだよぉ~!!」 梓「ひゃっ! 唯先輩っ!///」 私を目にした唯先輩が、満面の笑顔で駆けて来る。 そしてそのままの勢いで私に抱きついた。 嬉しい…でも、恥ずかしいし、そして喜んでいる姿を他の先輩方に見られるのは癪だ。 だからお決まりの文句を言おうとしたのだが、今朝の出来事を思い出し、 せめてものお礼になればと思い、今回はおとなしく抱きつかれることにする。 梓「もう…す、少し…だけですから…ね?///」 うわぁ…恥ずかしいよぉ~ 私多分、顔真っ赤だよ… そんな私の気持ちを知らずに、唯先輩はさらに笑顔を増す。 唯「あ、あ、あっずにゃ~ん! かわいい!かわいいっ!かわいいよぉ~!!」 さらにギューッと抱きしめられた上に頬ずりまでしてくださったからには、もうたまらない。 オーバーヒートという言葉がピッタリのごとく、私はのぼせてしまいそうだった。 澪「おーい、唯、その辺にしといてやれ 梓、ぐったりしちゃってるぞ~」 唯「はっ! あ、あずにゃん、ごめんね!」 梓「い、いえ、大丈夫です///」 それからはいつものティータイムが始まった。 ううん、今日はいつもとは違った。 ムギ先輩の持ってきた本日のお菓子は何と、ベルギー王室御用達と言われる超の付く高級チョコだし、 澪先輩は、ファンクラブの子から貰ったチョコを大量に抱えていたからだ。 澪先輩のチョコを頂く事はさすがに遠慮し、ムギ先輩の用意して下さった高級チョコを 恐る恐る頂いた。 …うん、おいしいすぎです。 唯「ムギちゃん、すっごいおいしいよ、これ!」 律「さすが至高の一品!ゆっくり味わって食べないともったいないぞ!」 澪「そういいながら一気に食うなよ、律!」 いくらすごいチョコだからといっても容赦しないのが我が軽音部。高級チョコがどんどんなくなっていく。 かく言う私も負けじと食べてたのはいうまでもない。 すると、美味しいチョコを食べて満足していた唯先輩が身を乗り出して言った。 唯「こんな美味しいチョコの後だとなんか出しにくいけど~」 (…そうだよね、やぱり皆さんにも用意してあるんだよね…) 私には唯先輩がこれからするであろう事がわかった。 今朝私にくれたバレンタインチョコと同じものをこれからみんなに配るんだろう。 あれはやっぱり”友チョコ”だったんだと思い知らされると、やはり少しだけ滅入った。 でもなんとか嫌な気分を払拭し、唯先輩を見やる。 唯「実は私も…バレンタインのチョコを持ってきたのです!」 フンス!を息を荒げる唯先輩。 律「ほ、本当か、唯!?」 唯先輩は長椅子に鞄と一緒に置いてあった紙袋を掴んで戻ってくると、 机の上にドサッとぶちまけた。 紬「ゆ、唯ちゃん! これは!?」 唯「うん、チロルチョコだよ! いろんな味をたくさん買ってみました!」 あ、あれ…? そう、机の上にぶちまけられたのは、コンビニにも売っている四角いチョコレート。 見間違えるはずもなくチロルチョコ…確かに大量のチロルチョコだった。 紬「こ…これがチロルチョコなのね!」 律「って、唯、どんだけ買って来てんだよ!」 澪「あ、私、この味好きなんだよな! もらっていい?」 唯「おー、澪ちゃん、お目が高い! それ美味しいよね~」 澪「だよな!だよな!」 唯「みんなで適当に持って行っていいからね!」 みなさんは色とりどりのチロルに目を輝かせながら、好きなチョコを選んでいく。 私は一人、事態を飲み込めていないまま、呆然としていた。 (唯先輩の友チョコって、チロルなの? じゃあ今朝のは一体… あれ? 一体何がどうなってんの?) 唯「あ、あずにゃんも遠慮しないで取ってっていいよ~」 そう声をかけられ、質問をぶつけようと唯先輩を見る。 梓「あ、ゆ、唯せんぱ…」 私が質問をし始めると同時に、唇に人差し指を当てて ”し~” のポーズをとった。 (今は言わないで…って事なんですね?) 唯先輩の意図が伝わり頷くと、唯先輩は舌をぺろッとだし、おどけて見せた。 その姿があまりにも可愛らしく、ドキドキしたのは言うまでも無い。 大量のチロルを何だかんだで皆さんで分け合い、持ち帰ることになった。 今日はこんな調子だったため練習なんて出来るはずもなく、 ひたすら飲み食いした挙句解散となった。 また私も今日は無理だと最初から諦めていたからいいんだけどね… そうして部活は終わり、帰路に着く。 三人の先輩とわかれ、最後は唯先輩と二人きりで並んで歩く。 もう聞いてもいいかな… 梓「あの、唯先輩…ちょっとお聞きしたいんですけど…」 唯「あ、うん、今朝のチョコのこと…だよね?」 梓「はい…私、あのチョコはてっきり”友チョコ”だと思っていたんです でも部室で出したチロルが”友チョコ”ですよね?」 唯「うん、そうだよ」 梓「…じゃあ、今朝のは…あの、やっぱり…///」 うわ…顔が熱い。胸がドキドキしてきた。 唯「うん、そうゆう意味のチョコだよ、あずにゃん」 梓「そうゆう意味…」 唯「私の本気の…手作りの”本命チョコ”だよ!」 梓「ほ、ほんとに…わ、私に…ですか?」 唯「うん…私、あずにゃんの事が好きだよ? ホントの本気で、あずにゃんが大好き!」 梓「っ!」 信じられなかった。 まさか唯先輩から”本命チョコ”をもらえるなんて… 梓「ううっ…ゆい、せんぱい…ぐすっ…」 唯「あ、あずにゃん どうしたの? 急になきだして…」 梓「す、すいません、私……ううっ…」 唯「ご、ごめんねあずにゃん…困らせちゃったかな…」 梓「ちが…ぐすっ…ちがうんです…うれしくって…うれしっ…」 唯「あずにゃん…」 梓「ゆっ…せんぱっ…うれしっ…よぉ~…ふえぇぇぇぇ~っ…」 感極まって泣き出した私は、唯先輩に思い切り抱きついた。 そんな私を優しく撫でながら唯先輩はゆっくりと語りかけてくれた。 唯「ほんとのこと言うとね… チョコを渡して告白なんて事、最初はする積もりなかったんだ… 私とあずにゃんって、そんな告白とかしなくっても、ずっと一緒に居るような気がしてたから… …でもね…」 梓「…」 唯「でも…このままあやふやな関係をずっと続けて行って本当にいいのかな?って思ったの ハッキリしない関係だといつかお互いの気持ちも離れて言ってしまう気がしてすごく心配になったの… だから私、絶対気持ちを伝えようって、そう思ったんだ」 ただただ驚くしかなかった。 私が漠然と思っていたことを、唯先輩も同じように思っていてくれたことに… だけど、同じように悩んだ結果はまったく逆。躊躇した私と、行動を起こした先輩。 いつも手を引いてくれるのは唯先輩のほうだったってことだ。 梓「わ、わたしも…私も同じ気持ちでした…」 唯「え…?」 梓「私も、何もしないでもずっと唯先輩と居られるって思ってたんです… でも本当にこのままでいいの…って思ってもいたんです でも…一緒に居られる今の心地よさに気持ちをごまかしてしまって…」 唯「あずにゃん」 梓「でも唯先輩はそんな私にお手本を見せてくれました」 唯先輩は私たちが一緒に居られる為の方法を… 絶えず一歩先を進む先輩として、後輩の私にしっかりと道しるべを示してくれた。 梓「唯先輩! 今度は私の番ですね!」 私は唯先輩の手をつかむと、いきなり駆け出した。 唯「ちょ、あずにゃん! どうしたの?いきなり走り出して!?」 梓「いいから、ついてきてください!」 そうやって唯先輩を連れてきたのは、帰りによく寄るコンビニだった。 唯「…へ? ここ?」 梓「はい、ここです! すいません、ちょっとだけ待っていてもらえますか?」 唯先輩を外に待たせ、私はコンビニに入りお目当てのものを見つける。 それを数個手に取り、レジで会計を済ませ、唯先輩の下へと戻ってきた。 梓「お待たせしました」 唯「あずにゃん、何買ったの?」 梓「ふふっ、それはもうちょっと後で教えますよ」 クスッと微笑み、今度は公園へ立ち寄った。 ベンチに唯先輩と並んで腰掛ける。 梓「唯先輩…えと…お、お返事をしたいと思います///」 唯「あ…うん、聞かせてほしい…かな///」 私も唯先輩も顔が真っ赤だ。 ここで ”私も好きです” というのはまだ簡単だ。 でもそれじゃダメ。 そうじゃないんだって、気づいたんだ。 だって今日はバレンタインデー。 好きな人へは本命の”チョコ”を渡さないといけないよね? 先ほどコンビニで買ったのはチロルチョコ。 その一つの包装紙を剥きながら唯先輩へ話かける。 梓「えと、唯せんぱい…これ、チロルチョコです さっき買ったんです」 唯「あ、うん、そうだね、チロルだね…でもなんで?」 梓「知ってましたか先輩、このチロル、新しい味なんですよ?」 唯「え?そなの? でも、それ、普通のじゃ…」 梓「ちがいますよ…そ、その… ”あずさ味” なんです!///」 そう言い私はチロルチョコを自分の口に咥え、そのまま唯先輩の唇へ押し付ける。 唯「んぐっ! んー…///」 梓「むぐ…んっんっ///」 唯「あむ…んっ…っぷはっ…///」 梓「はぁ…はぁ… おいしかったですか?唯先輩?」 唯「…うん…食べたことの無い味だったよ…クセになりそうな刺激の強い味だった」 梓「…ハッピーバレンタイン…私も…私も唯先輩の事が…大好きです!」 私からも勇気を持って一歩先へ踏み出すことが出来た。 もう大丈夫。 二人ともが同じ想いを胸に抱いて、そのための努力を惜しまなければ、 私達はずっとずっと一緒に居る事が出来る。 そうですよね?唯先輩♪ 唯「クスッ…もっと ”あずさ味” 食べたいな…」 梓「ふふっ まだまだありますからね…唯せんぱい…」 ちゅっ♪ FIN. 私も食べたい! 新発売!チロルチョコのあずさ味! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-07 15 40 09 甘いね -- (名無しさん) 2014-04-23 20 45 39 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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時間一覧 ■ 時間(標準) 一瞬:1倍 1ターン:1倍 2ターン:1.5倍 3ターン:1.75倍+α倍 永続:2倍+α倍 ■ 時間(ターン補正大) 一瞬:1倍 1ターン:1倍 2ターン:2倍 3ターン:3倍 ターン数=倍率
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【作品名】ゲッターロボサーガ 【ジャンル】漫画 【名前】時間 【属性】時間 【大きさ】時間並 【攻撃力】なし 【防御力】実体なし 【素早さ】動けない 【長所】時間は無限に存在するので寿命なし 【戦法】寿命勝ち
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「~♪」 突然だが私には好きな人が居る。 「あ、キョンキョーン!」「よお、朝から元気だな」そう、この人。 通称「キョン」 好きになったのはいつからかわかんないけど、キョンキョンは優しいんだ。 かがみ達やSOS団のみんなも好きだけどキョンキョンは違う意味で好き。 「やべぇ!校門閉まる!」「え?アッー!」 「走れ!」 「うん!」 毎回遅刻組な私達はいつもこうだ。 なんで早く来ないかって?キョンキョンに会えるなら登校の時間を遅らせてでも会いに行くよ私は。 まぁただ遅れてるだけなんだけどね。 「ふぅ~」 「ギリギリだったネ。」 「ああ、やばかったな」 こういう何気ない会話だけでも私にとっては嬉しい。 ~昼休み~ 「ギギギ・・・・腹へったのう・・・。」 「おお、キョンキョンよ!お財布を忘れてしまうとは情けない!」 「こなた・・・何か恵んでくれ・・・。」 「しかたないなぁ、はい」つ【チョココロネ】 「ありがたやありがたや」「べ、別にあんた(ry」「はいはいツンデレツンデレ」 「ツンデレは萌え要素の一つなんだZE?」 「でも俺には関係ねぇ」 やれやれ。 でも、こんなキョンキョンだからこそ好きになったんだろうね。 私の話にも乗ってくれるしちょっとドジだし。 そして、ある日彼が言った「なあこなた」 「何?」 「お前、好きな奴とか居るか?」 「!?」 「どうした?」 「な、なんでもないヨ」 「で、どうだ?」 「ん~、一応居るよ?」 目の前に 「そうか・・・。」 あれ?これはまさか? 「両想い」という単語が頭に浮かんだ。 次の日、私はキョンキョンに放課後教室に来るように言われた。 ktkr 「話って何?」 「あ、あのだな・・・。」私は敢えて急かす。 「これからバイトだからさ早く言ってよ。」 「その・・・。」 来るぞ来るぞ・・・。 ばっちこーい! 「谷口が告白したいらしいんだがどんな感じにしたらいいと思う?」 「は?」 時が止まった。 違う、時が凍り付いた。 「じゃあ好きな人居るのって言うのは・・・。」 「ああ、好きな人居るなら告白の仕方とか考えてるだろ?だから 「キョンキョンの馬鹿!」「!?」 はぁ・・・。 駄目だあいつ、早く何とかしないと・・・。 終われ 作品の感想はこちらにどうぞ
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ぼくには、希望を見出した人物がいた。 その人はあまりに強大な組織を敵に回し、安息の地などなくなってしまうというのに敢えて苦難を選んだ。 ぼくはその人を信じていたのに…ぼくには彼についていくことができなかった。 それは突然の出来事で、チームの仲間はボートに乗って行ってしまった。 ―――ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ。かつての仲間の殆どを見たのはあれで最後になった。 ブチャラティのチームとしての日々は、紫の煙となって消えていった。 見捨てたのはぼくの筈なのに。どうして見捨てられた感覚が胸の裡に湧くのだろう。 裏切り者は彼らではなく、ぼくが裏切り者だったからなのか…? もしそうなら、僕は――― ◆ ◆ ◆ 私には忠義を誓った人物がおりました。 その人は女性でありながら王となり、自国の民を思い、国に心身を捧げておりました。自分の犠牲をも厭わない程に。 しかし私は…あろうことか王の妻ギネヴィア様と恋に落ちてしまったのです。 その関係は円卓の騎士の分裂、その人が自身を捧げた国の崩壊を招きました。 騎士としての在り方とギネヴィア様への思い――私はそれらによる苦悩に打ち勝つことができなかった。 王を裏切ったばかりか、同じ円卓の友をこの手にかけ、ギネヴィア様の心を救うこともできませんでした。 自分の裏切りに罰を願おうにも、王は家臣を罰するにはあまりにも優しすぎた。 私に騎士を名乗る資格はない…私は―― ◆ ◆ ◆ ――なんて『恥知らず』なのだろう。 ◆ ◆ ◆ ―――朝。 彼、パンナコッタ・フーゴは起床した。 (もうこんな時間か…) 時刻は7時半をとうに過ぎている。 遅刻するといろいろと面倒なので、急ぎ気味に制服に身を纏い、朝食を抜いて自宅を出る。 通学にいつも使っていることになっている道を無言で進む。 その道を追うにつれ同じ道を歩く同校の生徒が数を増す。 かなり急いで家を出たので、寝癖が出ていないか、自身のブロンドの髪を他人に気づかれないように触る。 当然だが、他の学生はフーゴの髪のことなど見ていない。 彼を一目見るとすぐに目を逸らすからだ。 彼を見た学生は、必ず歩くスピードを速めるか、逆に遅くする。 フーゴと隣り合って歩いていては、いつキレて暴力を振るわれるかわかったものではない。 フーゴは学校で"そういう"扱いをされていた。 校門をくぐる。なんとか登校時間には間に合ったようだ。教室の席に座り、一息つくために校舎へ歩を進める。 廊下で学校の教師とすれ違うと、その教師はフーゴに道を譲るかのように廊下の端へ身を寄せる。 教室の戸を開けて入ると、中でガヤガヤとしていた空気が一度静まり返り、また活気を取り戻す。 「学校……」 フーゴは若くしてギャングとして活動していたため、あまり学校というものに馴染みがない。 特にジャポーネの学校には行ったことがないので、新鮮味を感じていた。 それと同時に、『学校』という単語はギャングになる前のボローニャ大学までの日々を思い出させるため、奇妙な懐かしさも感じていた。 (やり直し…そのために殺し合う…か) ◆ ◆ ◆ フーゴはブローノ・ブチャラティと決別した後、バーでピアノを弾きながら過ごしていた。 ボスの娘を守るために組織を敵に回す…それは危険な選択肢だとあの場にいた全員が分かっていたはずだ。 本当にぼくの方が"正しい"のか? 果たしてあの時、"裏切る"ことは間違っていたのだろうか? そんな疑問を胸に半年間を過ごした。 そして、フーゴの精神をスタンガンで焼かれたような衝撃が走ったのはつい最近のことだ。 パッショーネのボスが突然姿を現したという噂がフーゴの耳に入った。そのボスの名は―― ――ジョルノ・ジョバァーナ。 チームの新入りの少年だった。 それを聞いてから間もなく、フーゴは組織から呼び出され、決別したチームの結末を知ることになる。 ブローノ・ブチャラティ、レオーネ・アバッキオ、ナランチャ・ギルガが死んだ。 苦楽を共にしたはずの殆どの仲間が死んだ。 ――心臓に見えない穴を穿たれた気分だった。 絶望と共に自問自答を繰り返した。 …その中で行きつきかけた結論にこんなものがあった。 ――あの時、引き返していれば。 ――あの時、ぼくがしっかりとブチャラティを説得していれば。 ――3人は死なずに済んだんじゃないか? ――あの瞬間に戻れるなら。 ――いずれ起こることを知っていてもう一つのあり得る結果を手にできるのなら。 ――時を遡りたい。 明日はジュゼッペ・メアッツァに行かなければならないのに、フーゴはどこにもいなかった。 ◆ ◆ ◆ 聖杯戦争。どうやら、ぼくはそんな殺し合いに参加しているらしい。 ここは冬木という地らしいが、ジャポーネには来たことがないから馴染みが薄く、過ごしづらい。 誰がこんなところに呼んだのかはよくわからないが、ご丁寧に学生という身分まで用意してくれた。 どうやらぼくは『学年トップの成績を持ちながらも教師を4kgの百科事典でボコボコにした前科のある不良優等生』という役回りらしい。 他の生徒がぼくを避けるのもそのせいだろう。 ―――ある意味、ぼくに相応しい役回りだな。 教室の隅で、フーゴは自嘲気味に呟いた。 『……心はお決まりですか?』 そんなフーゴに話しかける存在がいた。 それも他人――NPC――に聞こえない念話で。 『……』 フーゴは何も答えない。ただぼんやりと窓の外を眺めている。 セイバーのサーヴァント、ランスロット。それがフーゴのサーヴァントの真名であった。 アーサー王物語の円卓の騎士ランスロットその人である。 『聖杯が定めたモラトリアム期間が終わるまであとわずかです。…我がマスターよ、ご決断を』 『……』 『聖杯を勝ち取るおつもりならば、私はあなたの剣となりましょう。聖杯戦争から逃れたいのであれば、私はあなたの盾となりましょう』 『……わからないんだ』 『…わからない?』 フーゴはランスロットに合わせ、念話で返す。 頭から言葉をなんとか絞り出しながら文を紡ぐ。 『聖杯の力で過去に戻りたいのか。これからどうしたらいいのか。――それすらも』 確かにフーゴはやり直したいと願った。だが、仮に聖杯を手に入れて過去に戻り、チーム全員が生き残る結果を手に入れたとして、 それはジョルノ達が手に入れた『真実』を、それに向かおうとする意志を否定することに繋がるのではないか? それをジョルノは、ブチャラティは、皆は良しとするのだろうか? もしブチャラティだったら、どんな決断を下したのだろうか? 他の参加者を敵に回して聖杯を取るか。手がかりも何もないのにあるのかすらわからない殺し合いから離脱する方法を探るか。 『セイバー…教えてくれ。あのアーサー王物語の裏切り者の君ならば…どうする?』 パンナコッタ・フーゴ。彼は聖杯戦争の場でも、一歩を踏み出せずにいた。 ◆ ◆ ◆ ランスロット。円卓の騎士の中でも最高の技量を持つ「完璧なる騎士」にして「裏切りの騎士」。 ランスロットとフーゴが契約を結ぶ引力のなったのは間違いなく『尊敬する人物との決別』だろう。 フーゴの元へ召喚されてから数日間。 ランスロットは魔力供給パスを通じて過去をその垣間見ていた。 フーゴも夢という形でランスロットの過去をみていたのだが、昔から英才教育を受ける過程で『アーサー王物語』について元々知っていたため、彼は別段気にすることはなかった。 (この少年も…仕える者から離れたことで多くの友を失った) 違いはあれど、似たような境遇にある少年を見たランスロット。 そんなランスロットには、ある思いが芽生えた。 信じた者と決別し、殆どの友を失い生き残った少年が、どのような道を歩くのか。 それを見守っていきたいという思いが。 そして今――その少年は自身のサーヴァントにこんな問いを投げかけた。 『セイバー…教えてくれ。あのアーサー王物語の裏切り者の君ならば…どうする?』 確かに――この少年の知るアーサー王物語ではランスロットは裏切りの騎士だろう。 最後まで騎士でいられなかった。ランスロットはそれを悔いていた。 だが、偽りの世界で命を授かった今、騎士としてもう一度やり直すことができる。 裏切りの騎士と呼ばれた者は、一歩を踏み出せないマスターに対しこう答える。 『私ならば――かつての私のあるべき姿となり、その信念に従うでしょう。この世界で、騎士として"やり直す"ことができるのですから』 もう一度、最後まで主に仕える騎士として。 『フーゴ…あなたにとってのあるべき姿とは…どんな人ですか?』 偽りの世界に召喚され、学生として日常を過ごしている。 偽りの世界で命を授かった――それはランスロットのマスターも同じであった。 【クラス】 セイバー 【真名】 ランスロット@Fate/Zero 【パラメータ】 筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運D+ 宝具A 【属性】 秩序・善 【クラス別スキル】 対魔力:B 魔力に対する守り。魔力除けの指輪の効果もあり、ランクが高くなっている。 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。 騎乗:B 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。 【保有スキル】 精霊の加護:A 精霊からの祝福により危機的な局面で優先的に幸運を呼び寄せる能力。 発動は武勲を立てうる戦場に限定される。 無窮の武練:A+ ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。 心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。 【宝具】 『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:30人 相手の策によって丸腰で戦う羽目になったとき、楡の枝で相手を倒したエピソードからくる宝具。 自身が触れた武器を魔力で侵食し自身の宝具とする能力。 それが宝具ならそのランクを維持、それ以外のもの(鉄パイプ等)はDランクの宝具となる。 自身の宝具とした武器はすぐに自分の手足のように自由に扱うことができる。 この能力の適用範囲は、原則として彼が『武器』として認識できるものに限られるが、 セイバーは理性を保っているため拡大解釈次第で如何様にもなる。 『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 友人の名誉のために変装で正体を隠したまま馬上試合で勝利したエピソードからくる宝具。 他者に変装し、自分の正体を隠蔽する能力。 セイバーとして召喚されたことにより狂化していないため、他者に変装することもできる。 敵を欺くことも可能だが、あくまで外見を装うだけで能力や性格までも模倣することはできない。 マスターは本来、サーヴァントの姿を視認すればそのステータス数値を看破できるが、彼はこの能力によりそれすら隠蔽することが可能。 『無毀なる湖光(アロンダイト)』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人 セイバーの本来の宝具。 上記二つの宝具を封印することによって解放できる。 絶対に刃が毀れることのない名剣。 「約束された勝利の剣」と起源を同じくする神造兵装。 もとは聖剣だったが、同胞だった騎士の親族を斬ったことで魔剣としての属性を得てしまった。 セイバーの全パラメーターを1ランク上昇させ、また、全てのST判定で成功率を2倍にする。 更に、竜退治の逸話を持つため、竜属性を持つ者に対しては追加ダメージを負わせる。 セイバーとして召喚されたため、消費する魔力がバーサーカーのそれよりも少なくなっているため、積極的に使っていける。 【weapon】 『無毀なる湖光(アロンダイト)』 少なくともバーサーカーとして召喚された時よりは使いやすい。 【人物背景】 円卓の騎士の一人、「湖の騎士」にして「裏切りの騎士」と呼ばれたランスロット。 アーサー王の妻ギネヴィアと恋に落ちた彼は、 「完璧なる騎士」であるが故に愛する女を救うことも王を裏切ることもできず、 ギネヴィアの不貞が暴露されたことで円卓の騎士の座を追われ、ブリテン崩壊の一端を担ったという汚名を受けた。 第四次聖杯戦争ではバーサーカーとして召喚されたことがある。 【サーヴァントとしての願い】 騎士としてマスターに忠誠を誓うと共に、 マスターであるフーゴがどんな道を歩むのかを見守っていきたい。 【マスター】 パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より- 【マスターとしての願い】 分からない。 【weapon】 「パープル・ヘイズ」のスタンドビジョン スタンドで格闘戦ができる。 単純な力も非常に強く、自身の体をかなり遠くへ投げられる。 【能力・技能】 スタンド「パープル・ヘイズ」 破壊力:A スピード:B 射程距離:C 持続力:E 精密動作性:E 成長性:B 能力は『殺人ウィルスをばら撒く』。 パープル・ヘイズの両手拳に付いているカプセルに入っており、そのカプセルが割れると周囲にウィルスが撒き散らされる。 そのウィルスを呼吸で吸い込むか皮膚から体内に侵入すると約30秒という短い時間で『どう猛に』体内で増殖し、 生物を内側から腐らせるようにして殺してしまう。 一旦殺人ウイルスに感染したらスタンドを解除しても増殖は止まらず、 スタンドの本体であるフーゴ自身もウイルスに感染すれば死ぬ。 しかし、太陽光や照明等といった光で殺菌されてしまう。 【人物背景】 かつてのブチャラティチームの一員だったイタリアンギャング。 普段は落ち着きのある紳士的な性格をしている反面、とても短気でキレやすい。 元は下級貴族の出身で、あらゆる分野で光る才能を持っていたため、幼いころから徹底的な英才教育を施されてきた。 家からの金による補助もあるものの、頭はよく、13歳でボローニャ大学に入学できるほど。 しかし、祖父による強制と最悪な家庭環境、クラスでのいじめ、そして彼の心の支えであった祖母の死に目にも会わせてもらえず、限界に達したフーゴは自らを叱りつけた教授を殴り倒してしまう。 その後、警察に拘留されていたところをブチャラティに拾われてギャングとなる。 ところがボスの方針に反抗し組織を裏切る道を選んだチームメンバーに賛同することができず、一人チームから離脱した。 結果的に生き残ることができたが、このことはフーゴにとって大きなわだかまりとなっている。 この聖杯戦争では、ジョルノ達がディアボロに勝利し、ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャが死んだことを知った時点からの参戦。 ランスロットと契約を結び、フーゴはこの世界であるべき姿となりやり直すことができるのか、あるいは――― 【方針】 分からない。
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その身を淡い桃色に染めていた木々は、今は打って変わって鮮やかなディープグリーンで辺りを支配している。枯れた木が寒々しく連なっていた山々も、見違えるほど隆々活々としてこの町に鎮座していた。 「ふう……」 自然界では様々な移り変わりがある一方、しかし俺はいつもと変わらず早朝ハイキングに精を出していた。そう、今年で3年目となる通学路でのワンシーンである。 しかし、慣れとは怖いものである。入学当初はこの坂を見て、後3年近くもこの坂を上ったり降りたりしなければいけないのかとただひたすら鬱な気分で俺のハートは溢れかえっていたのだが、いつの間にやらそれが苦にはならなくなっているのだから。 それどころかこの坂を上らないと半分寝ている脳が活性化しないらしく、最近では休日にどこかへ遊びに行ったところで、どこか間の抜けた一日を過ごすことになってしまうのである。 おかげでハルヒに何度叱られたことか……これは余談だったな。 慣れといえば、俺はこの2年間でSFともホラーともつかぬ、常識を逸脱した体験をしてきたものだ。しかも幾度と無く、である。 宇宙人同士の闘争、未来人とのミッション遂行、超能力者達がしでかした偽殺人事件……人間の範疇に止まらないことから3歳児でもわかる稚拙なことまで、ありとあらゆる事象に身を費やし、そして現在に至っている。 確かに希少価値の高く、2度と経験できないようなことばっかりだった。正直それらに巻き込まれながらも自分が五体満足でいること自体奇跡に近いと思う。ああ、でもナイフで脇腹をグリグリされたときはさすがに死ぬかと思ったけどな。 だが、そんな珍事件ですら霞ませるようなことがここ一年で発生していた。 ……そう、珍事である。決して人知を越えた展開が発生するわけではないのだが、少しおつむが足りなくてとってもKYなある一人のサイキック少女によって、俺の人生はより波瀾万丈なものへとシフトしている。 彼女はアクシデントを発生させる特技を持っていた。しかも見ず知らずのうちに、である。 そして困ったことに、その件に関して自覚を全く持っていないのである。 まるでハルヒが持つ能力を、本人が自覚していないのと同様に。 ……以前もこんな事があった。 詳細は省かせてもらうが、あいつがあらぬ事をしでかしたおかげで、俺はハルヒと佐々木、そしてなぜか谷口にボッコボコのけちょんけちょんにされたのだ。 言われの無い行い、冤罪だと主張したのだが聞き入れてもらえず、俺の内に秘める憤りを打ち払おうと、諸悪の根源である橘京子を呼び出した。 そしてどういう事だちゃんと説明しろと問いつめると、奴は 『あたし何にも変なことはしてません! キョンくんの迷惑になるようなことなんてしてないのです! 誓ってもいいのです!』 等と言い張りやがった。 『お前以上に俺に迷惑をかける奴なんざいないんだよ。最近はハルヒの方がよっぽど大人しいんだ』 みたいなことを言ったら今度は 『違うもん違うもん!』 と大声を上げて泣きだしやがったのだ。 公衆の面前で女の子に泣かれると分が悪いのはこちらだ。俺は観客と化した通りすがりの皆様に白い目を向けられ、仕方なく橘をあやしながらその場を後にした。どうやってこいつに言い聞かせてやろうかと腹の中で考えつつ。 だがしかし確たる物的証拠が見つからない以上、問いつめてもしかないと思い、せいぜい自重するようにとしか言えなかったのである。 ……たく、本気で勘弁してもらいたいね。機関で引き取ってもらって矯正したらいいんじゃないかと思うんだがどうだろうか? 森さんに教育指導をしてもらったら、一週間くらいで常人の半分くらいのマナーを身につけて戻ってくるかもしれない。 しかし、そんな痛い少女に対して、最近では逆に皆が慣れてきたらしく、事あるごとに原因は彼女と決めつけるようになってきた。そのため最近ではそのようなトラブルは無くなってきた。あの時の一回を除いて。 その件に関しては……どうせそのうちトラブルが発生すれば話さなければいけないから、今回は省略。 結局何が言いたいかというと、俺もハルヒも佐々木も、勿論長門や朝比奈さんや古泉……多分九曜や藤原だって、橘京子の奇行に慣れてきたってことだ。 俺がこの通学路を苦渋と思わなくなってきたと同様に。 古泉曰く、ハルヒの閉鎖空間の発生は、佐々木達に出会ってから一時的に増えたものの、それでも減少の一途を辿っているそうだ。 佐々木に対して当初戸惑いみたいなものがあったようだが、それと同じだ。ハルヒは持ち前のパワーで佐々木にはすぐ慣れてしまった。 橘に対してもそれは同じ。時間が経つにつれてハルヒは平常心を取り戻しつつあるようだ。 ……ま、佐々木よりはかなり時間がかかっているみたいだけどな。 そのため、以前は橘が奇行を起こすたびに閉鎖空間がひっきりなしに出現してきたが、ここ最近では橘のせいで閉鎖空間が発生することは極めて希になってきているという。 これもひとえに、『橘だからしょうがないか』という、ハルヒの諦めにも似た感情がそうさせているのだという。 佐々木の方も同感で、以前のように紅い巨人が発生しなくなってきているのだという。橘が残念そうに話してくれた。 だがな橘。お前は佐々木の心を平穏にするのが使命だろうが。なぜ波風たたせるようなことを望む? そんなわけで、多少の不確定要素はあるものの、世界は往々にして平和であった。 しかし、平和な世の中を嫌う我が団長様はここ最近つまんないを連発しており、俺に何かイベントをせがむのがここ数日の既定事項となりつつあった。 その姿に内心慌てているのは言わずもがな古泉と機関であり、姑息ではあるが何やら面白いイベントを計画敢行中だという話は聞いている。 全く、機関の仕事も楽じゃないよな。将来仕事に困っても、いくら給料がいいからといっても、機関にだけは出稼ぎに行きたくはないね。 ともあれ、そんなわがままっぷりを全開にしているハルヒであったが、しかしここ最近は少々考えが変わっていた。 自分の興味の対象が「不思議なこと」から、「『橘京子以外』で不思議なこと」に変更していたのだ。 これを聞いたとき、俺は鷹揚に頷き、ああようやくハルヒも人並み程度のインターレストを持つ風になったんだなって、しみじみ思ったよ。 もしかしたら、『人の振り見て我が振り直せ』っていう言葉を肌で実感したのかもしれない。ある意味、橘の本来の目的を達成させているのではないかと思うな。 まあ、少々違うかもしれないが、橘のおかげで、世界は崩壊せず安定な方向へ向かっているといってもいいだろう。 だが、喉元過ぎれば熱さを忘れるとはよく言ったもので、ハルヒだけでなく、俺もこの平和な日常に食傷気味になっていたのだ。 だからあんなことをふと思いついたんだろうな。『何か面白いことはないかな』って。 橘が巻き起こすのでなければ、別に少々の事件が起きても構わない。ちょっとした事件があって、それに俺たちが卵の薄皮一枚くらい関わっている程度であればじゃんじゃん起きてほしいという、不埒な考えが沸いてきたのだ。 我が校が見え始めた、いつもの通学途上の坂の上で、そんなことを考えながら歩いていた。 しかし、罰当たりなことを願うもんじゃないな。 俺が願ったからかどうかは知らないが、このとき既に『不埒な考え』というのは渦を巻いて発生していたのだ。 予兆は確かにあった。 昨日――週明けの月曜日のこと。その日も今日と、そしていつもと同じようにこの坂道を上って登校していた。 朝とはいえ、日差しは結構暖かい。いや、暑い。この坂を上るのには慣れたと入ったものの、これだけお天道様が出しゃばってくるとさすがに堪える。 そう言えばハルヒの思いつきで、なんだか良くわからない同好会未満のこのサークルを立ち上げたのもこんな天気だったか。……そうか、もうすぐ2年がたつというのか。 ふと思い返す。去年はこの時期に『SOS団創立一周年記念パーティ』と称して、どんちゃん騒ぎをしたんだったな。鶴屋家所有の山荘で山桜を鑑賞しながら。 ……そうそう、思い出した。去年のリベンジも忘れず執り行わなければならない。半強制的にやらされたとはいえ、ちょっと自信があった岡部のモノマネがあまりにも不評だったから、見返してやらないとな。 ……うむ、正直それは今回の件とは関係ない話だ。スマン。 つまりはそんな事を思いながら丘の上の学校を目指していたのだ。 ようやく校門までたどり着き下駄箱から内履きを取り出して履き替えようとすると、ある人の姿が目に入った。 「よう」 「…………」 クールビューティならぬサイレントビューティを絵に書いたかのような表情で、彼女――長門有希は玄関の前に突っ立ったまま俺を凝視していた。 「長門、お前はいつもこんな時間に登校しているのか?」 「……違う。今日は特別。少し遅れた」 だよな。俺は長門と登校時間に出くわしたことなんて一度も無かったし、長門ならもっと早くに登校しているだろうと思っていたさ。 余談ではあるが、俺は登校時に他のSOS団の面子と顔を合わせたことがない。もしこれがいつもの土曜日と同じなら、俺は毎日ハルヒの昼食分のジュースを奢る羽目になってしまうかもしれない。 ……いや、それは無いか。稀に俺より遅く登校してくるときもあるからな。ハルヒは。本当に稀だけど。 「昨日」 ん? 「何かあった」 長門の、いつもにもまして文節区切りの口調が印象的だった。 「何か――とは、何だ?」 「…………」 長門はしばし沈黙し、 「何か、あった」 間に句読点を挟む程度の違いを見せつつ、そう囁いた。 何かあった、というのは昨日の日報を俺に報告してくれているのだろうか? それとも俺が昨日朝起きて夜寝るまでの一日を、長門に報告すべきなのだろうか? 語尾の口調のイントネーションだけはつけて欲しいものである。日本語でも英語でも、肯定文を尻上がり口調にするだけで疑問文として捕らえてくれるんだ。それくらいのことをしてくれても罰は当たらないぜ。 「………………」 だがしかし、長門は更に集光点を3平方マイクロメートル程狭めて俺を見つめたのみであった。 殆ど変化していないその表情だが、しかし俺は感じ取っていた。長門がこれだけ表情を露にしているのは珍しいと。 そして、何故かは知らないが、長門は不機嫌な態度を俺に示している、と。 「どうした長門。昨日何かあったのか?」 「……別に」 長門の声は、振動数こそいつもと同じであったが、その内なるものは間違いなく1オクターブ低かった。できれば腕組みしてそのセリフを放って欲しかったぜ。あの芸能人みたく。 「そうかい……俺のほうは取り立てて何も無かったけどな」 「そう……」 俺が昨日の出来事を一文で簡潔に述べると、長門は燕返しを切り返すが如く素早い動作で靴を履き替え、エミューの如くスタスタとその場を走り去った……いや、歩き去っていった。 「おい、長門?」 「なに」 「俺に何か聞きたいことがあるんじゃないのか?」 「聞きたいことは、聞いた」 はて……俺は何か重要なことを暴露したのだろうか? 特になんて事のない会話をしただけのような気がするが……あれでもう全て分かってしまったのだろうか? 「そうじゃない。あなたから聞くことは、もうない」 少し距離が離れたためであろうか。自位置から寸分違わずコリメートさせたその視線は、某スーパーロボットの冷凍ビームも凍らせるような冷たいものであった。 長門、もしかしてお前怒っているのか? そのような雰囲気を感じざるを得ない。 だが、何故? 何故長門は怒っているのだ? 会話からして、『その原因は、あなた』とでも言いたげな表情なのだが、まかり間違っても俺は長門を怒らせるようなことをしてはいない。 第一長門と最後に会ったあの日だって…… ・・・・・ ……土曜日の不思議探索の日だって、長門はいつもと変わらぬ無表情を醸し出していた。 いや、午後の組み分けで俺と一緒になって行動していたときは、むしろ良い意味で感情が豊かになったといっても差し支えない。 午後に俺たちの二人組となったその日、俺は新装開店のマンガ喫茶に行った。そら難しい本を読むのもいいが、たまには息抜きで簡単なものを読むのもいいんじゃないかと思っての措置だ。首を傾げていた長門を少々強引に連れて行ったのはご愛敬だ。 手続きを済ませて足を伸ばせてリクライニングのできる席を確保し、長門をコミックコーナーに立たせ、『好きな本を読んで良いぞ』と言い残し、俺は一冊のマンガを手に取って自分の席へと戻った。 長門は暫く本棚とにらめっこしていたようだが、暫く経つと他称本の虫が正常動作をし始めた。 そう、恐ろしい勢いでマンガを読み漁っていったのだ。 せっかく確保した席にも座らず、笑い声も上げず。マンガを手に取り、同じテンポでページを捲り、そして本棚に返す。まるでマンガ一冊一冊と対話するように、長門のコミック黙読は行われた。 図書館と違ってそこそこ五月蠅い店舗内にもかかわらず、長門は初めからそこにあった花瓶の如く身動き一つとらない。 ……そういや、初めて図書館の存在を教えてやったときと同じ反応だったな…… その時俺はそんな事を思い出していた。 読み終えたマンガを顔に乗せて居眠りモードに入っていると、いきなりその本を取って『これ、読んでいないなら読ませてもらう』とって搾取したのには少し驚いたけどな。 結局、集合時間間際になってもぴくりとも動かず、俺が説得してようやく帰らせ、その日の不思議探索は幕を閉じたのだった。 ・・・・・ もしかしてあの時、無理矢理帰らせたことを根に持っているのか……いや違う。あの時の長門はむしろ上機嫌だったといってもいい。人一倍長門の表情に詳しい俺が断言する。 また一緒にここに来るか? との問いに、『行く』と、レスポンスをした事を覚えている。いつもの長門とは段違いに力強い声だった。たとえるなら、蚊の鳴くような声が鳩が鳴くような声に変わったくらいの変化だ。 そう。確かにその時までの長門は気分上々だったはずだ。 しかし。 今の長門はそれとは真逆。無表情の長門よりも厳しい表情をしていた。表情が無いというわけではない。以前より数ミクロンのオーダーで喜怒哀楽に溢れてきているその表情は、『怒』を表しているのだ。 これだけ怒りの表情を露わにしているのは、コンピ研とのゲーム勝負の一件以来かもしれない。 しかし、何故……? 「…………」 俺の中の意見が固結びをし始め、エンドレスループに突入していようとしていた矢先、長門は振り返り自分の教室の方へと歩き始めた。 俺は何も声をかけなかった。いや、できなかった。 一人廊下をぽつぽつと歩く長門の背中に、『喋りかけないで』という張り紙がしてあるように見えた。 頭をポリポリ掻きながら、俺はやや上の空状態で教室へと向かっていった。先ほどの長門の態度が妙に気になって、そこはかとなく呆然としながら歩いていた。俺が膨らませた風船を、自身の爪で割ってしまった時のシャミセンくらい惚けていただろう。 暫く長門が怒っている理由を、幾度となく模索し反芻し―― 「……何だかわからないが、また後から謝っておこう」 その結論に達したとき、自分の教室のドアが寸前に迫っていた。 気分を入れ替え、ドアを開き自分の席へと進み…… 「…………」 ……いや、もうね。何と説明したらいいんだろうか。まあ、状況を説明することはそんなに難しくないし、結論だけを言うのであれば至極簡単だ。生卵を握りつぶすよりもな。 だが、何故かどうしてだと、理由を聞かれると俺は答える術を持っていない。そりゃあそうだろう。その理由を知っているのは当の本人――涼宮ハルヒ以外あり得ないだろうからな。 「……なによ」 俺が達磨のように沈黙を続けていると、ガラス越しに映った俺に気づいたのか、そう声をかけてきた。 だが俺はかける言葉が見つからない。 必死になって脳内活性物質を注入するように脳に命じ、妹が自分の手の爪を切り終わるくらいの時間をかけて慎重に言葉を選んだ。 「……今日は、水曜日だったか?」 「ばっかじゃないの? 月曜に決まってんじゃない」 完全に侮辱した声でやる気なく喋るハルヒ。表情は窓の向こうを向いたままなのでわからない。 それは奇遇だ。実は俺もそう思っていたんだ。昨日はシャミセンとどっちが多く寝ていられるか勝負した覚えがあったし、もしかしたら月曜じゃないかと9割9分9厘くらいはそう考えていたんだ。 だがお前のことだから、もしかして曜日を変更してしまった可能性も否定できなかったっていうわけで…… 「いつまでそんなところでボーッっと突っ立ってんのよ」 うるさい。全部お前のせいだろうが。 ……等とは言えず、適当な言葉を模索する。 「ああ、ちょっと空気になってみたくてな。空気は自由でいいな、って考えてて」 「何馬鹿なこと行ってるのよ。空気だって実際は常温常圧で一秒間に数億回衝突し合っているわ。あんたみたいにふらふらしてたら生きていけないわよ、空気の世の中は」 そう言うものなのか…… 「そう言うもんよ」 俺は諦めて自分の席に着く。ハルヒは未だ空を眺めていた。 「…………」 言わねばならない、のだろう。しかし、なんと言うべきか…… 「ハルヒ。もう一度聞くが、今日は水曜日か?」 「……あんた、頭大丈夫?」 正直自信はない。 「勉強ってやりすぎると痴呆になるのかしら? なかなか面白そうな研究内容ね。調べて文化祭で発表しようかしら?」 嫌だ。誰が調べるんだ……って、このままハルヒのペースに巻き込まれててもしょうがない。 「話がある。真剣な話だ」 「何よ。藪から棒に」 俺は自らを奮い立たせて、ハルヒの目元から口先までをじっと見据え、そして言い放った。 ――お前、その髪型……そのツインテールはいったい何だ?―― 「いいじゃない。別に」 あっけらかんと言うハルヒ。 「あたしだって女の子なんだし、たまにはいつもとは違う髪型にしたい日もあるわよ。それとも何? あたしのこの髪型は似合わないとでも言うの?」 「い、いや……決してそう言うわけではないが……」 正直に言うと、似合っていない。あのちょんまげライクのポニーテールもそうだったが、それに輪をかけてひどい。 「もう少し髪を伸ばしてからの方がいいかな、なんて個人的に思ったりするわけでしてね……」 「橘さん、みたいに?」 「は?」 「ツインテールは橘さんの専売特許って訳ね。……わかったわよ。やめれば良いんでしょ、やめれば」 何をどう理解したのかはわからないが、ハルヒはそう言って自らのツインテールを解いた。ハルヒ独特の、鳥類系の唇を形成しつつ。 「ほら、これでいいんでしょ? ……ふんっ」 いつもの髪型に戻ったハルヒは、不機嫌レベルを2ポイントほど上げてまた空の彼方へと視線を戻していった。 ……ホント、つまんないわね…… ハルヒがそうつぶやいたのは、気のせいだったのだろうか? その後のハルヒは、いつにも増して不機嫌であった。そして不思議なほど俺にちょっかいをかけてくると事もなかった。 珍しい日もあるもんだなと振り返ってみると、そこには口の中に銀紙と鷹の爪を放り込んだようなハルヒの顔。 なんだかその表情が俺の瞼の裏にこびりついて離れない。何故だろうか? とはいえ、ハルヒが放つ不機嫌オーラの量が著しく増加していることを除けば、至って普通の一日であった。 授業もハルヒに邪魔されることなく、飯時も誰かに呼び出されることもなく、平穏に過ぎ去っていった。 放課後の団活だってそうだ。いつもの如く愛くるしい振る舞いで俺にお茶を給仕してくれる小柄なメイドさん(毎日毎日大学から来なくても良いのに……ご苦労様です)、薄いスマイルを浮かべてボードゲームに興じる理系特進組生徒。 そして何があろうと無表情で黙読する文芸部員…… 「…………なに」 「いや、何でもない。すまない」 ……そうだった。そう言えば長門も朝から不機嫌だった。いつもなら俺の視線に気づくことなく読書にふけっているのだろうが、今日に限っては俺が長門に視線を向けると、キッとした表情で睨み返してくるのだった。 こりゃ、機嫌が直るまでまだまだ相当時間がかかるな。暫くは大人しくしておくことにしよう。 機嫌が悪いと言えば、ハルヒも朝からずっとそうなんだが、こちらはいつもの如く団長専用席に座ってネットサーフィンに興じている。 面白いページでも見つけたのか、たまに見せるニヤケ顔がハルヒの機嫌を底上げしているようにも見えた。 俺はそんな中、珍しく朝比奈さんが仕入れてきたカードゲーム(。大学で流行っているカードゲームらしいが、名前は忘れた)に興を注ぎ、その一日は過ぎ去っていった。 「よっ、キョン。どうしたんだ? 難しい顔して。何か考え事か?」 ここでようやく冒頭に戻る。右斜め後方から、我が悪友の参上だ。 「……いや、そんな大それたものじゃない。昨日の行いを鑑みて、今日に活かそうと瞑想していたんだ」 「そう言う事は寝る前にやるもんだ。通学途中になるなんざ、お前もとうとうイカれてきたな。だからあいつとつるむのは止めとけってったんだよ、俺は」 うるさい。後者はまだ検討の余地はあるが、前者は真っ向から否定してやる。俺はいたってまともな精神を有している。それはハルヒと会う前からだって変わりないと自負している。 「キョン。確かにお前の自由意志を尊重したいが……あいつの対応には、誰もが手に余る。巻き添えを食らわないようにもっと離れたほうがいいぜ。……ま、すぐ後ろの席だからそれも叶わないか」 ああ、そうだな。だが流石にもう慣れてきたぜ。 「いいや……あいつの本性はあんなもんじゃない。いいから深い関わりを持つなよ。分かったな?」 谷口は、2つ前の席のヤツが発表している傍ら、必死に英和辞書をめくるリーディングの授業時の如く険しい顔で俺に迫ってきた。 はて……少し様子がおかしい。何故谷口は今更そんなことを言い出すのだ? そんなことは2年前からの既定事項だ。 それにハルヒの異常行動は大人しくなってはいるものの、相変わらず健在であるし、谷口だってそんな事は百も承知のはずだ。 ……いや。 前にも谷口の調子がおかしいことがあったが、あの時は…… 「谷口」 「何だ? 改まって?」 「俺のクラスには、涼宮ハルヒなる人物が存在していたか? そんな人物は聞いたことが無いんだが?」 「ははは、何言ってんだキョン。俺をハメようたって無駄だぜ。涼宮の存在をお前が忘れるわけがない。かれこれ2年もあいつの変な思いつきに付き合ってて、お人よしにも程があるぜ」 とんち合戦に勝負した高僧のような表情をした谷口が若干嘲り口調で喋るのを尻目に、俺は安堵の溜息をついた。 ……大丈夫。ハルヒは存在している。また皆が消えた世界に逆戻りしたかと冷や冷やしたぜ。 「……キョン、おまえやっぱおかしいぞ。やっぱり俺の言ったとおり、症状が出てきたんだよ」 いや、単なる確認だ。これが夢かどうか確かめるためのな。あの悪夢とはもう金輪際付き合いたくないからな。 ハルヒが存在する……即ちこれは悪夢じゃない。俺が知っている、傍若無人で猪突猛進、そして妄想を既定にしてしまう、凡庸ならぬ能力を備え付けたあの涼宮ハルヒは、この世界に光臨しているのだ。教室の最後方の席に鎮座しながら。 加えて可愛いだけの元上級生も、他校に追いやられた超能力の使えない男子生徒も、そして何の特別な力を持たない、読書好きの内気な少女も存在しない。 そう、存在しないんだ。 ここは俺が望んだ世界なんだ。あいつの申し出を断ってまで居る事を望んだ、俺が楽しいと思ったこの世界なんだ。 「ちっ、長生きするぜお前は……」 賛辞とも侮蔑ともつかぬ言葉を吐く谷口を無視し、俺はそう再確認していた。 しかし、俺を嘲け笑うかの如く、運命は俺の望みを瓦解したのだった。 取り留めの無い話をしながら、俺と谷口は教室までやってきた。 幸か不幸か、俺は3年になっても谷口と同じクラスであった。これも悪友の成せる業とっても差し支えないのかもしれない。 もちろんハルヒも同じクラスで、ポジションも変わらず俺の後ろである。こちらもやはりというかなんというか……いやはや、これだけ同じだと逆に怪しまれる気がするのだが……何故誰も怪しまないのだろうか? とは言え、2年時と全く同じではない。大凡の奴が同じクラスなのも確かなのだが、それでも数人は別のクラスに鞍替えとなっている。 例えば……元々理系希望であった国木田とか。 国木田がいなくなったお陰で、俺は谷口と共に宿題写しをさせるくれる人員確保に錯綜するハメになったのだが、それはご愛嬌である。 ハルヒに聞けばミッチリと教えてくれるのだが、受験生ともなって、あたりに陰湿な空気を漂わせたくは無いため自重している。 ま、そんなこんなで、これが俺の今のクラスだ。何だかんだと説明したが、結局のところ、さして大きな変更点は無い。3年になったとはいえ。 それが証拠に、俺がこのドアを開けると、ガラス越しに空を見上げるハルヒの姿が見えるのさ。ほら、こうやってドアを開くと―― ガラガラガラ…… 「よっ、ハルヒ。元気……か……??」 ――違和感が、あった。 「遅いじゃない、キョン」 ――いつもとは異なる違和感が。見ただけで分かった。 「谷口なんかとつるんでちゃ、何時までたってもみくるちゃんと同じ大学にはいけないわよ」 ――喋り方は、涼宮ハルヒ。その人に相違ない。 「あんただけ違う大学に入学するのは許されないわ」 ――しかし、その声は……一体……? 「浪人も勿論ボツ。予備校に行くだけでどれだけ金がかかるかわかってんの?」 ――いや、それ以前に、お前は黒髪だったはず……どうして栗色の髪になってるんだ……? 「自宅で勉強するってのもダメよ。あんた自ら進んで勉強するタイプじゃないんだから」 ――長さだって、昨日よりもあからさまに長い……一日でそれだけ伸びるはずは無い…… 「SOS団の活動は、場所を移して更に隆盛を極めるんだから」 ――何よりその髪型。……それはまるで…… 「分かってるの、キョン!!」 空を向いていたその顔は、くるりと反転、廊下側へと……俺の方に向けられた。 俺の瞳に入ったのは、俺の知る涼宮ハルヒではなかった。 2つに束ねた栗色の髪、ぱっちりと見開いた瞳、幼げな顔。 そう、それはまさしく―― ――北高の制服を着た橘京子が、ハルヒの席に陣取っていたのだ―― ※橘京子の分裂(前編)に続く